(1)オリックスの多角化戦略とリスクヘッジ
オリックスは、プロ野球球団のオリックスバッファローズを保有しているため、知名度の高い会社であると思います。オリックスは、日本最大のリース会社として有名ですが、本業が何であるのか非常に分かりにくいでしょう。オリックスの経営は、リーマンショック後までは不動産部門に投資を集中させていたため、資金繰り破綻の危機になりました。リーマンショックは、大企業から中小企業まで壊滅的な打撃を与えていたため非常に危機的な状況だったということですね。
オリックスは、ロベコ買収による資産運用ビジネスだけでなく、ゴルフ場運営や電力事業などの多角化を進めており不動産の比率を低下させています。オリックスは、リース事業の収益や銀行部門の資金を活用しながら、収益のリスクヘッジを重視しているということですね。
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(2)関西エアポートの出資スキーム
関西エアポート買収のスキーム概要
- 新関西国際空港が関空と伊丹の運営権売却
- 関空運営会社の取得総額2兆円超
- 関空運営会社の運営期間 期間44年
- 関空運営会社の運営権料 毎年490億円
- 関空運営会社の出資額 800億円
関西エアポートの出資800億円の内訳
- 関西エアポート株式の40% オリックス
- 関西エアポート株式の40% ヴァンシエアポート
- 関西エアポート株式の20% 関西企業を中心に大手企業が約30社
関空運営会社は、売却期間45年と長期になるだけでなく、金額2兆円を超えているため1社だけの応札になっています。国際空港運営は、日本に運営経験のある民間企業がないうえに、資金リスクがあまりにも大きいという問題がありました。
ヴァンシエアポートは、リスボン空港など25空港を世界で運営しているため、国際空港の運営ノウハウを保有しています。オリックスは、ヴァンシエアポートと提携しながら、関西を中心とした大手企業の約20社の出資募集にも成功しておりリスクヘッジにも成功していますね。
(3)関西エアポートの資金調達
- 出資金800億円 オリックス40%
- メザニンローン200億円 民間資金等活用事業推進機構から30年間
- シニアローン1600億円 300億円のコミットメント枠 みずほ銀行・三井住友銀行・東京三菱UFJ銀行・政策投資銀行・クレディアグリコリ銀行
関空運営会社は、半官半民の民間資金等活用事業推進機構から200億円の資金調達に成功しており、劣後社債12.6億円と株式19億円の資金拠出も行っています。オリックスの空港経営は、マクロ経済の追い風も吹いており、マイナス金利により有利なローンも組成されています。
マイナス金利が銀行に与える影響をまとめましたが、銀行株が収益悪化懸念により、株価の暴落が続いています。オリックスは、メガバンクが収益先を拡大したい時期に資金調達ができているため、関空運営会社は経済環境の追い風もあるでしょう。
みずほ銀行と三井住友銀行は、プロジェクトファイナンスの主幹事になっており、関空運営会社は1600億円の長期資金調達に成功しています。オリックスは、2015年11月10日の発表時点ではシニアローンの資金調達を1600億円と想定しており、300億円の融資増額に成功したということですね。
(4)関空運営会社の長期資金調達とリスクヘッジ
- 財界160億円 20%の出資負担
- メザニンローン200億円が30年間
- シニアローン1600億円が35年間の返済
- 新関空会社は1件5000万円以上のとき瑕疵担保責任がある
- 1500億円超の収益 3%を収益連動負担金として国に利益配分
メガバンクは、マイナス金利による金利低下により、融資先の開拓が経営課題になっています。みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行は、関空運営会社に出資するだけでなく、融資組成によるフィーの獲得に成功していますね(三井住友銀行が出資をせずに主幹事になっているのであれば、三菱東京UFJ銀行の失態か有利な条件を提示したのかもしれません)
オリックスとヴァンシエアポートは、関空の設備に不具合が多いときの保険として、瑕疵担保責任を契約に設定しています。新関空会社は、不利な契約を締結しているように見えますが、オリックスは関係省庁との利害調整を容易にするために国への追加利益配分の仕組みも構築していますね。
(5)関西エアポートの業績予想と航空機リースの活用
関空運営会社の営業収益推移予想
- 2016年3月期売上高 2016年4月1日開始のためなし
- 2017年3月期売上高 1685億円
- 2018年3月期売上高 1723億円
- 2019年3月期売上高 1789億円
関空運営会社の総資産推移予想
- 2016年3月期総資産 2600億円
- 2017年3月期総資産 17105億円
- 2018年3月期総資産 16812億円
- 2019年3月期総資産 16496億円
関西エアポートの施策予想
- 収益力拡充 空港内の宿泊施設を拡張
- 収益力拡充 空港内のショッピング施設の拡充
- 収益基盤強化 関西国際空港の発着便を増加させる
- 収益基盤強化 オリックスの航空機リースを活用して路線開設
ショッピングモール売上高ランキングの比較をまとめましたが、成田空港が売上高1位になっており、関空はインバウンド消費を拡大できる余地があります。オリックスは、ヴァンシの空港ノウハウを参考にして、商業施設の配置変更や出店施設拡大を行うことがWBSで放送されています。
関空運営会社には、JR西日本といった旧国鉄だけでなく、近鉄や阪神阪急、南海鉄道や京阪電鉄も出資しており鉄道会社との提携にも期待できそうです。オリックスは、ヴァンシグループとの提携により国際空港の運営ノウハウを獲得しているだけでなく、オール関西の鉄道会社とが連携する仕組みを整えました。
関西国際空港は、離発着枠の稼働率が7割程度と言われており、関空運営会社は航空会社を誘致することにより収益力の基盤を高めることができます。オリックスは、ダブリンを拠点にした航空機リースを行っているため、LCCに機体を提供することにより稼働率を高める構想もあるようですね。 スポンサードリンク
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