東京電力支店廃止のリストラ 分社化と倒産しない理由

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東京電力の支店廃止リストラと分社化の構想が報道されていいます。東京電力が倒産しない理由は国からの資金援助ですが、発送電分離の法案通過で地域独占が弱まる可能性が高いですね。


(1)電力会社の銀行融資と倒産回避

電力会社は公共性の高い会社ですが、電力会社の費用は変動費と固定費に分かれます。東京電力のように、火力発電所を保有している会社は、発電所の稼働率が上がれば石油や天然ガスの消費量が増えることになります。東京電力は福島原発と柏崎刈羽原発が停止しているため、火力発電所の稼働率が増加しており燃料費が増加しています。

東京電力は原子力発電所を保有していますが、日本原子力発電が倒産回避のときに行ったリストラに似ている経営手法を行っています。東京電力のような電力会社にとって、発電所や送電線の修繕は、安全対策であることを考えると固定費に近い性質を持っています。

東京電力の会計取引は非常に複雑化していますが、銀行格付けが不良債権に格下げされることを回避するために行われています。銀行格付けが不良債権になると、事実上、新規の銀行融資は不可能になるためリストラや複雑な会計スキームとなっています。
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(2)東京電力黒字決算の真相

東京電力売上高の推移

  1. 2011年3月期 売上高5,368,536百万円
  2. 2012年3月期 売上高5,349,445百万円
  3. 2013年3月期 売上高5,976,239百万円

東京電力当期損益の推移

  1. 2011年3月期 当期損失1,247,348百万円
  2. 2012年3月期 当期損失781,641百万円
  3. 2013年3月期 当期損失685,292百万円
東京電力の業績を見ると、3期連続の赤字となっており倒産危機であることが分かります。東京電力は3期連続赤字となっていますが、毎年5000億円以上の損失を計上しているため倒産危機にあるように見えます。

東京電力だけでなく、企業は手元の現金が枯渇せずに新規出資を受け続けることができれば、理論上は倒産せずに会社存続することが可能となります。東京電力の決算を見ると、倒産しないためのからくりが非常に分かり易いですね。

猪瀬辞任の可能性 借金破綻と裏金領収書をまとめましたが、猪瀬知事が東電を批判するパフォーマンスを行っていました。東京電力のリストラで、東電病院の売却先は注目されていましたが、猪瀬知事と病院の関係に注目が集まっています。

(3)原子力損害賠償支援交付金の特別利益が6000億円

  1. 2014年中間決算 売上高 3,216,126百万円
  2. 2014年中間決算 経常利益 141,663百万円
  3. 2014年中間決算 特別利益 原子力損害賠償支援交付金 666,255百万円
  4. 2014年中間決算 特別損失 原子力損害賠償費 230,580
  5. 2014年中間決算 純利益 616,195百万円
東京電力2014年中間決算を見ると、原子力損害賠償支援交付金を特別利益に6662億円計上しており、計上していなければ決算は赤字となっています。東京電力は福島原発事故により、本来であれば、原子力損害賠償費用で倒産していますが国の支援により倒産しないですね。
家計で考えると、家計のやり繰りのためにカードローンなどを活用することはありますが、融資返済が前提で計画的に活用する方が多いですね。東京電力は国から多額の資金支援を受けていますが、資金支援の金額があまりにも大きくなれば、返済するほうが開き直れば、お金を貸す立場よりも強くなることがあります。

原子力損害賠償支援機構は、国と電力会社が出資しており、東京電力に4兆円以上の資金支援を行っています。原子力損害賠償支援機構の調達資金は、事実上、政府保証の資金で調達しているため暗黙の国民負担が発生しているのが現状ですね。

(4)東電の組織再編 支店廃止

  1. 東京電力10支店 支店が支社をコントロール 約4000人の社員
  2. 東京電力80支社
  3. 東京電力の支店が配下にある支社などの予算、人事などを権限を握る
  4. 東京電力神奈川支店であれば、地方電力を上回る規模
  5. 東京電力は支店を廃止して、本店が支社を直轄に組織再編
  6. 東京電力の配置転換 約3000人 本店や支社に振り分け
  7. 東京電力の配置転換 約1000人 福島原発汚染水対策や復興支援など
東京電力が支店を再編することについて、2013年11月8日の日経新聞が報じています。東京電力は日本最大の電力会社で、年間売上高が約6兆円ですので支店の規模が地方電力よりも大きく、絶大な権限を持っていることが分かります。

東京電力の神奈川支店は、横浜支社、川崎支社、鶴見支社、藤沢支社、相模原支社、平塚支社、小田原支社や営業センターなどを管轄にしています。東京電力は10支社を廃止することで人員を捻出、汚染水対策や復興支援などに配置転換を行う方針を示しています。

東芝 粉飾決算の真相をまとめましたが、東電だけでなく国策企業は、マスコミや銀行が経営を支えることになります。東電や東芝のような大企業は、売上の回収リスクは低いと言われていますが、経営危機のときに利害関係者が支えていることが倒産しない理由としても大きいです。

(5)東電の組織再編 持ち株会社化

東電の組織再編 カンパニー制 2013年4月

  1. コーポレート 本社機能 社員1万人 資産5兆円
  2. 燃料・火力 社員3000人 資産1.5兆円
  3. 送配電 社員1.6万人 資産5.5兆円
  4. 小売り 社員8000人 資産数十億円

東電の組織再編 持ち株会社化 2016年度を検討

  1. 持ち株会社
  2. 燃料・火力会社
  3. 送配電会社
  4. 小売り会社
東京電力の組織再編について、分社化が検討されていることを2013年11月8日の日経新聞が報じているので見てみましょう。東京電力は、2016年度以降に持ち株会社化するために、カンパニー制に移行しており、福島第一原子力発電所の汚染水対策など廃炉部門は2015年春に社内分社する方針のようです。

東電子会社の融資保証 持ち株会社と倒産対策について、東電や原子力損害賠償機構と大手銀行の調整が行われています。東電が分社化すれば、子会社の燃料・火力会社や送電会社が資産を保有するため、電力債や私募債の一般担保の価値が低下するリスクが浮上しています。

(6)電気事業法改正案成立 民主党反対の理由

  1. 2013年6月 電気事業法改正案の衆議院審議 自民党、公明党、民主党の賛成で可決
  2. 2013年6月 電気事業法改正案の参議院審議 民主党の問責決議可決で廃案
  3. 2013年11月1日 電気事業法改正案 衆議院通過
  4. 2013年11月12日 電気事業法改正案 参議院経済産業委員会で可決
  5. 2013年11月13日 電気事業法改正案 参議院本会議で可決の見通し
電力会社の持ち株会社化は電気事業法で認められておらず、2014年の通常国会で電気事業法改正案が成立すれば2016年度春に施行されることになります。経済産業省は発送電分離を、2018年度から2020年度に実施することを目指していましたが、民主党が政局に利用したことで発送電分離の法案改正が遅れていました。

東京電力など電力会社の分社化は、2013年6月電気事業法再改正案ですが自民党・民主党・公明党の賛成多数で衆議院を通過して参議院に送られました。参議院で、民主党が問責決議に賛成したため採決されず、東電など電力総連の議員が影響力を発揮したため発送電分離による電力価格値下げは先送りされています。

電力市場自由化の動向 新規参入企業の経営比較をまとめましたが、電気事業法改正案が衆議院を通過しています。東京電力は分社化を行う方針のようですが、送配電会社の分離だけでなく、競争による電力価格の値下がりに注目ですね。

(7)東京電力の実質国有化と資産隠し

  1. 東京電力の政治家支援
  2. 民主党に東京電力出身の国会議員
  3. 民主党は東京電力の資産査定に失敗
電力会社は、政治家を擁立したり政治家を支援することだけでなく、大量の設備を調達するため財界にも強い影響力を発揮してきました。民主党は参議院選挙を目的として推進していた法案を、突然、反対しましたが参議院選挙で大敗しており、有権者の支持を得られなかったと言えます。

東京電力タックスヘイブンの闇 民主党の破綻を見ると、公的資金投入前に整理すべき資産を、海外に残していることが分かります。東京電力が倒産しない理由は、民主党の決定によるものですが、東電が有利になるように政策決定を行った可能性が高いですね。
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