銀行融資の格付け 不良債権と倒産(2)

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銀行融資の格付けが悪化すると、不良債権となりますが、新規融資は事実上、不可能になります。銀行は不良債権先から融資の回収を急ぐと倒産しますが、その背景には、信用リスク格付制度を金融庁が厳格に運用したことがあるようですね。

(1)銀行融資の不良債権と倒産

銀行融資は、企業経営が悪化して資金回収の可能性が低下すると、不良債権として扱われることになります。銀行は倒産しないと思われる方も多いと思いますが、不良債権が多くなりすぎると北海道拓殖銀行のように倒産します。

銀行が倒産しないために、銀行融資や企業に対して格付けを行い、適切な金利や不良債権になりそうな銀行融資の回収を行い不良債権を減らすということが行われていますが、問題が多いようですね。

銀行融資の格付け制度に不備があることを、佐藤真言さんの『粉飾 特捜に狙われた元銀行員の告白』のp70に、不良債権や倒産を気にしすぎることで、銀行が融資を行わなくなった背景が書かれています。
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(2)銀行融資の信用リスク格付制度

銀行が融資先への貸出金を一つ一つ精査する「信用リスク格付制度」が始まったのもこの時期だった。その格付制度によって、一社一社に対してどのくらいの金利で、どのくらい融資ができるのかを厳格に判定するように、銀行は金融庁から義務づけられた。
銀行は信用リスク格付制度を基にして融資を行っていますが、企業格付けをベースにして、企業から取得した担保や融資金利が適切であるのかを見ています。銀行にとって、格付けの悪い不良債権先に融資を行っていれば、担保や金利引き上げ、融資回収を行う必要性が正常先よりも強くなります。

不良債権比率推移の減少理由をまとめましたが、2002年3月末と2014年3月末を比較すれば、不良債権比率に大きな差があります。銀行融資の格付けは、企業の倒産確率が増えれば低下しますので、景気が悪化した時期は不良債権が増加していますね。

(3)不良債権先の再生と倒産

築地支店で私が担当したのは不良債権先ではあるものの、企業努力によっては再生、再建を果たすことができ正常先への生還ができる可能性のある会社だった。同時に、気を抜くと、倒産してしまう会社でもあった。そのような赤字が続き、業績が思わしくない中小企業を約80社あまり担当することになった。
銀行は、企業格付け応じて貸倒引当金を積み増す必要がありますが、企業格付けについて簡単に見てみましょう。
  1. 正常先
  2. 要注意先
  3. 要管理先
  4. 破綻懸念先
  5. 実質破綻先
  6. 破綻先
銀行の格付けは、融資先が破綻懸念先以下を不良債権先と金融庁が定めていますので、佐藤真言さんが担当したのは破綻懸念先以下の企業が多かったものと思います。

アベノミクス崩壊 倒産の真相を見ると、選挙の影響による9月倒産を一部メディアが報じていますが、銀行の定例格付けの影響ですので関係ないですね。アベノミクスについて、メディアは倒産が増加することを煽っていましたが、データは何も提示されておらず心理面から景気を悪化させているのは、マスコミであると言えそうですね。

(4)債務超過の融資先とマル保融資

どの会社も銀行から見て正常な状態ではなく、決算書は赤字で債務超過の融資先だ。新規融資ができる約10社にしても銀行にリスクのないマル保がほとんどで、銀行がすべてのリスクを負うプロパー融資は難しい。その他の約70社はもっとひどい状態で、新規融資は事実上不可能だった。
債務超過先の企業には、原則として新規融資は行えませんので、債権管理による融資回収や融資の継続が行われるのみでしょうね。銀行融資の中には、信用保証協会の保証を受けることで行われる、マル保がありますが保証料が必要ですので、資金調達コストは高くなります

マルナン閉店 渋谷廃業と倒産を見ると、財務余力のあるうちに社長が廃業を決断していますね。企業が倒産した場合の不良債権を考えると、マル保責任共有制度の場合は80%の債権保全、緊急保障制度などは100%の債権保全が行えますので、大きな差がありますね。

(5)格付制度と金融庁検査による不良債権増加

信用リスク格付制度の本格的な導入によって、銀行の融資先企業に対する姿勢は一変した。金融庁は、銀行に資産構造改善を強く迫り、銀行に対する検査を実施した。結果、金融庁検査で融資先の中小企業がより厳しい格付けに評価が落とされることは日常茶飯事となった。
銀行融資にとって格付けの意味合いを見ると、格付けの評価が低下することで、銀行は貸倒引当金を積みますことで収益が低下します。金融庁が銀行融資の中でも、中小企業の格付けを不良債権にしていくということは、銀行が中小企業融資に厳しくなることになりますね。

融資返済と林原倒産 銀行と弁護士で、金融庁の与えた影響は不明ですが、中国銀行と住友信託銀行が会社存続よりも融資回収を優先していた可能性があります。林原のキャッシュフローは黒字でしたが、銀行と弁護士対応に失敗した結果、林原グループ解体に繋がったようですね。

(6)銀行融資の貸し渋りや貸し剥がし

金融庁は、銀行の不良債権をすべて開示させようと躍起になっていた。「貸し渋り」とか「貸し剥がし」という言葉が生まれたのもこの時代のことだ。中小企業の現場では、今まであたり前のように実行されていた融資が急に実行されなくなったり、銀行から返済を迫られることになったため、大きな動揺と混乱が生じた。
銀行融資は、企業の資金需要によって行われますので、金融庁検査による銀行内部の格付け低下が頻発すれば、突然、銀行借入が困難になります。ワールドロジ倒産破産と上場廃止を見ると、バブル崩壊後に再生見込みの薄い企業に債権放棄を行い不良債権が拡大しましたので、上場企業であっても債権放棄を拒否する事例もあることが分かります。

金融庁が銀行融資の格付けを厳格にすることで、不良債権や格付けが悪化、貸し渋りや貸し剥がしが倒産に繋がったとすれば、金融行政が厳格すぎたのかもしれないですね。貸しはがし対策と倒産(3)に続く。
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